シーラカンス日記

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zoom RSS 「藪の中」で殺したのは誰か

<<   作成日時 : 2005/04/14 23:07   >>

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今は昔、とある道中の藪の中。
ある若い夫婦のうちの女のほうを見かけ劣情を抱いた盗賊が夫婦双方をだまし、
夫を縛り上げて妻を手篭めにするところから話は始まります。
現場には夫の死体が残ります。その後、盗賊はつかまり、妻も寺で保護されますが、
登場人物によって語る「事件の真相」の供述が全く異なります。
まさに、「藪の中」です。

それが、芥川龍之介の「藪の中」という話です。
会社に入ったばかりの研修期間中、これを全編読まされ、
「誰が本当のことをいい、誰が偽りを申し立てているか、班で話し合って答えよ」
とのお題を受けたことがあります。

盗賊「多襄丸」は、手篭めにした女から一種異様な目つきで
「あなたか夫かどちらかが死んでくれ」と詰め寄られ、
その瞬間、女の強さに惚れてしまい、
男として夫の縄を解いて決闘し、打ち勝つのです。
しかしその間に、女はさっさと消えてしまい、
多襄丸も自分の身の危険を感じて必死で現場から逃げ出します。

妻の真砂は19歳、手篭めにされた直後、夫の目を見て、そこに
汚された自分への蔑みの表情を見て絶望し、
縛られた状態のままの夫を刺し殺した、と供述します。
夫自身も「殺せ」と蔑みのなかつぶやき、死んでいった、と言います。

夫の「武弘」は26歳。妻が手篭めにされた後、
盗賊に「このままお前の夫と一緒にいても、その汚された身ではもはや
夫婦仲は折り合い悪くなろう。俺と夫婦にならないか」と
妻が盗賊に説得されるのを猿ぐつわされた屈辱的な状態のまま目撃します。
そして、妻が盗賊と一緒に手に手を取って逃げようとするとき、
妻が盗賊に「この人(夫)を殺してください。わたしはあの人が生きていては、
あなたと一緒にはいられません」という信じられないセリフを吐くのを見ます。
絶望した武弘は、二人がいなくなった後、自らの命を妻の小刀で絶った、と
死霊として巫女の口を借りて話しています。

ワタシの所属していた同期入社の社員たちの班では、
特に男の子たちが、「多襄丸」がウソを言っている、そうに違いない、と言いました。
あるいは、夫の「武弘」が自分のブライドを守るために
ウソを言っているのじゃあないかと。

でも、ワタシは当時22歳でしたけれど、
これは、もっとも多くを語っていない人間が一番怪しいんじゃないか、
と思った覚えがあります。妻の真砂が一番あやしい。

そもそも女っていうのは、非常にめんどうで難しい、論理の複雑な動物だ、と
自分自身で思うわけです。しかも、うそつきの天才である、と。
男性からみて、理屈に合わない言動をするのが女。
予測にもぜんぜん合致しない行動をするのが女。
理屈には合っていたとしても、
人情には全く合致しない冷たさも発揮できてしまうのが、
女なのだと思うのです。

女、という動物は、「正義」というものが実は非常に世間的には脆弱なもので、
メシの種にはならん、「正義」だけじゃ人は生きぬけない、ということを、
肌で知っている動物なんじゃないか、と思うわけです。
腕力が弱い分、そのあたりは割り切って生きていかないと、
生き伸びられない、という宿命も、その背景にはあります。

多分、真実に一番近いのは、多襄丸が話したセリフにあると思います。
妻の真砂は自分の罪の深さを隠そうとし、
夫・武弘は自分のメチャメチャに傷つけられたプライドを守ろうとして、
双方がウソをついている。
そこが、この事件の真実を藪の中に押し込めている
原因なんじゃないのか、などと思うわけです。

なんか我ながら、ブログがエイジさんちっくになりました…。

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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
私が思うにこのBLOGは僕よりも難解であって藪の中です(汗)
ところで
藪の中を解明すること自体が芥川龍之介の策略に陥っていると思いますよ というのはですね
芥川が随筆でこういってるからです
「時代を越えて存在する名作は読む人によって、どんな風にでも解釈できる小説が多い」
さすが芥川!
名作は迷作であると、きっとこの藪の中、どれが真実であるかは無いんですよね
エイジ
2005/04/15 00:35
シーラカンスさんに絵本を読んでもらってる気持ちになったのは私だけでしょうか?♪(* ̄m ̄) ププッ 
エイジ
2005/04/15 00:46
1人が真実を言っていて、2人が嘘をついていると仮定して考えてみました。
が、どれも、しっくりこない・・・何か引っかかる感じ。
「全員が嘘をついている」・・・これもしっくりこない。
はまりそうではまらないジグソーパズルみたい(笑)
羊の皮を被ったヤギ
2005/04/15 19:52
あはは、これを絵本として読んだら確かに面白いでしょうね。
でも「手篭め」をどー説明するんだ、という問題点が残ります…。

この話は多分全員がどこかで自分の自尊心を守るためのウソをついている、というのがありうる話ですよね。それと、各々が信じる「真実」というものが、折り重なるとここまで脆弱である、というのも、芥川が言わんとするポイントであるような気がします。まあ、ものごと全てに実は「実体」はないのかもしれません、パータリプトラよ。
シーラカンス
2005/04/15 20:17
こんにちは!
ふと思ったのですが、シーラカンスさんとは逆に、男心に立って解釈すれば話は簡単で、二人とも女をかばうために自分がやったと言っていることになって、「女がやった」で終了かもしれません。ええ、男は単純な生き物ですので(笑)。
Uジロー
2005/04/16 11:35
あー、ホントですね。それはすごく説得力のある説ですね〜
シーラカンス
2005/04/16 12:28
藪の中は、作者がどうでも解釈できるように隙間を開けているそういう作品です。一方、大岡昇平の(事件)は殺人か傷害致死化が裁判で争わる作品ですが、争点は作品中に結論として提示される、つまり現実の事件と同じように決着が付けられるのです。しかし、2005年とはいえ面白い問題提起でしたね、これからもこのような鋭角的なプロポーズを期待していますよ。
tatsuuma
2011/08/08 06:01

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